ピロリ菌のお話

<ピロリ菌とは?>

正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」と言います。

文字通り、「ヘリコ:回転運動する」数本の鞭毛を持つ「バクター:菌」細長い菌で、「ピロリ:胃の出口付近/前提部」に主に感染します。

胃の中は胃酸(塩酸)の海であり、口から侵入した多くの菌はここで殺菌されます。

しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を産生し、胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解→アンモニアで胃酸を中和する能力を持つため、菌の周囲に至適環境を作り上げることが出来ます。

胃の中は、ライバルもおらず、際限なく食べ物が降って湧いてくる、格好のエサ場というわけです。

 

<ピロリ菌はどこから?>

ピロリ菌は、幼少期に経口的に母子感染(親の口から、あるいは親が噛み砕いた食べ物からの感染)を起こすことが多いようです。

また、井戸水など菌に汚染された水から感染することもあるようです。

ピロリ菌は、幼少期の未熟な胃粘膜に感染し、大人の成熟した胃に感染することは稀であるため、ピロリ菌の除菌後再感染はほとんどないと言われています。

 

<ピロリ菌に感染すると、どうなるの?>

ピロリ菌は「胃や十二指腸の炎症・潰瘍性病変」の原因となることが知られていましたが、最近では「胃癌」の原因の多くがピロリ菌感染であることがわかってきており、ピロリ菌を除菌することで有意に胃癌の発生率が低下したという報告が出ています。

また、「MALTリンパ腫」や「B細胞性リンパ腫」などの発生に繋がることが報告されている他、「特発性血小板減少性紫斑病」、「小児の鉄欠乏性貧血」、「慢性蕁麻疹」などの胃以外の病気の原因となることが明らかになっています。

 

<ピロリ菌の検査には、どのようなものがあるの?>

胃カメラ検査にて胃・十二指腸の炎症・潰瘍性病変を認めた場合、保険適応にてピロリ菌の検査を受けることが出来ます。

また、胃カメラ検査を希望されない場合でも、自費診療にてピロリ菌の検査を受けることが出来ます。

 

・迅速ウレアーゼ検査(生検法)

胃カメラ検査を行った場合、粘膜生検にてその場でピロリ菌の検査できます。

ピロリ菌が産生するウレアーゼの有無を色素反応により判定し、数十分程度で結果が分かります。

胃内環境や内服中のお薬(胃薬や抗生剤)により判定に影響が出ることがあるため、状況判断で血液検査をお勧めする場合が有ります。

  

・ピロリ菌抗体検査(血液検査)

血液検査にて、ピロリ菌の「抗体(菌を攻撃するために人側で作られたタンパク質)」の有無を検査します。

外注検査のため、結果が出るまでに1週間前後要します。

 

・ピロリ菌抗原検査(糞便検査)

糞便検査にて、排泄されたピロリ菌の「抗原(菌そのもの)」の有無を検査します。

外注検査のため、結果が出るまでに1週間前後要します。

 

・尿素呼気試験(呼気検査)

検査用の試薬を内服して頂き、呼気中の尿素の濃度を検査してピロリ菌の有無を判定します。

胃内環境や内服中のお薬(胃薬や抗生剤)により判定に影響が出ることがあります。

外注検査のため、結果が出るまでに1週間前後要します。

 

<当院でのピロリ菌検査は?>

当院では、ピロリ菌の感染判定の検査と除菌判定の検査を、状況判断にて使い分けています。

・ピロリ菌の感染判定

  胃カメラ検査有り→「迅速ウレアーゼ検査(生検)」もしくは「ピロリ菌抗体検査(血液検査)」

  胃カメラ検査無し→「ピロリ菌抗体検査(血液検査)」

・ピロリ菌の除菌判定→「ピロリ菌抗原検査(糞便検査)」

※当院では「尿素呼気検査」は行っていません。